【メモ】
第16回国会 衆議院運輸委員会議事録 第2号 (昭和28年5月27日)
○石井国務大臣 ただいま上程されました木船再保険法案について御説明申し上げます。
 木船は、いわゆる機帆船、はしけ、引船等を合せて総計約二万八千隻、約百十万総トンを擁しておりまして、機帆船について見ても、その輸送量は内航汽船の一倍半以上であつて、国内輸送上きわめて重要な地位を占めているのでありますが、木船海運業は概して零細企業でありまして、その大部分がいわゆる一ぱい船主で、みずから家族とともに乗り組んでおり、木船は木船船主にとつてその全財産といつても過言でないのであります。また唯一の生活手段でもあるのであります。従つて木船の滅失は、一方において国内輸送の円滑な運営を阻害するとともに、他方において木船船主を生活の困窺に陥れ、社会問題化するおそれがあるのであります。
 しかるに木船は鋼船に比べまして、危険率が高く、従つて保険料も高く、また木船船主側にも保険思想の普及が遅れているため、木船保険は営利保険の対象としては不適当な弱体保険であります。このため昭和二十五年、船主相互保険組合法が制定され、木船船主が相互に相集まつて結成する木船相互保険組合によつて相互保険を行い得ることとなつたのでありますが、この木船相互保険組合の保険事業には、再保険を引受ける機関がないのでありまして、これは保険事業として危険きわまりないものであります。また現在の木船相互保険組合は、発足後いまだ二年を経過したばかりで、その基礎も弱小で、信用度も微弱であり、附保隻数も全機帆船の一割にも満たない状態でありますので、これらの弱点を是正補強するため、新たに木船再保険特別会計を設けて、政府が木船相互保険組合の負う保険責任を再保険し、もつて木船相互保険組合の健全な経営を確保するのが、この法律案を提出する理由であります。
 次にこの法律案の概要は、木船相互保険組合とその組合員との間に保険関係が成立したときは、同時にかつ強制的にその保険金額の百分の七十を政府に比例再保険することといたし、政府がこの再保険事業を行うために要する木船再保険特別会計の事務費は、一般会計から繰入れて国庫で負担することといたしますとともに、政府が木船相互保険組合の保険責任を再保険することとなつたために、弱小な木船相互保険組合が濫立することを防止し、木船相互保険組合及び政府の木船再保険事業の健全な経営を確保するため、附則において船主相互保険組合法を改正し、従来附保隻数百隻以上となつていた木船相互保険組合の設立要件を、附保隻数三百隻以上に改正するものであります。
 なお木船再保険制度実施に要する経費及び木船再保険特別会計予算は、昭和二十八年八月一日から実施できるように昭和二十八年度政府本予算案に計上せられております。
 何とぞ慎重御審議の上すみやかに御可決あらんことを希望いたします。
運輸省『日本海運の現状』  (5) 木船保険 (昭和37年7月)
 36年3月における木船の木船相互保険組合への加入率は17%(トン数比)に過ぎない。 このように加入率が低いのは保険対象である木船船主の大部分が一杯船主といわれる零細企業者であるために、保険料の負担に堪えきれないことが最大の原因と考えられる。 今後加入率を高めるためには、保険料率を大幅に引き下げる必要があるが、最近の海難発生状況からみると早急に実施することは困難が予想される。 36年度木船相互保険組合の収支状況は収入5億4,400万円(保険料その他)、支出5億4,500万円(保険金、事務費その他)であって差引き100万円の欠損を生じた。
 付保険船舶の海難発生状況は34年度352件、35年度444件、36年度491件と増加している。これを事故別にみると坐礁が全事故件数の約40%、機関故障が24%でとくに多くその他はいずれも10%以下にとどまっている。その原因としては船員不足に伴う未経験者の配乗が多いことによるものと考えられている。
 最近木船船主界において小型鋼船を建造するものが著増している。これは木船と小型鋼船との建造価格が大差なくなったこと、輸送機関として木船より性能が高く、かつ、 荷主の信頼度が厚いこと等の理由によるものである。このため木船保険組合に対し、これら小型の鋼船を保険の対象に加えるようにとの要望が一般化している。 
第43回国会 衆議院運輸委員会議事録 第7号 (昭和38年2月22日)
○久保委員 次にそれじゃ木船再保険法のことで二、三お尋ねしたいのであります。木船といわれるものが、いただきました資料では大体三万四千以上の船があるわけです。ところが木船保険への加入隻数は一割に満たない三千三百隻足らず、九・八%と加入率はこうなっておるのです。これは相互保険ということで、その相互保険の形式が悪いわけではもちろんないと思うわけですが、今いろいろ話があった通り、内航経営の実態が、せっかくのこの危険分散の方式である保険に加入できない実態にあるからこそだ、こういうふうにも思うし、もう一方木船の性質からいって、危険度が非常に高い。いわゆる損害率が高いというか、そういう二つの面から保険の加入率が低下している。せっかくの制度があまり生きてこない――と言っては語弊があるが、全体の木船の中に占める比重は非常に少ない。これでは制度自体に疑念を抱かざるを得ない。こういう点の改善方法について運輸省は何らか考えておられるかどうか。制度はあるが、まあ九・八%、一割足らずだから、あとは仕方がないということでは、制度を置くこと自体に疑問があるわけなんですしどういうふうに考えておりますか、いかがですか。
○辻政府委員 木船の相互保険の加入率が一割内外という点につきましては、御措摘の通り非常に少のうございまして、私どもも機会あるごとに加入の利点を説きまして呼びかけておるのであります。まあ数は少のうございますが、年々加入率は増加しつつあるわけでございます。
 なぜ現在こういうふうに加入率が少ないかという原因でございますが、今御指摘がございましたような経営状態が苦しいということも一つの原因であると考えております。また保険ということに対しまして、ただ単に事故さえなければ、結局保険料を払うだけ損をするのだというふうな保険に対する認識の不足も相当あるわけでございます。それからまたこれらの木船の関係者の資金の調達は、親戚縁者から金を借りる、そういう者が相当ございまして、いわゆる金融機関からの融資が割合に少ない。従いまして、船を物的担保にするというふうなケースが少ない。いわゆる対人信用で、親戚縁者から資金を調達するというふうな資金の調達の形式も、こういった保険の加入率を少なからしめておるんではないかというふうに考えておる次第でございます。
 今後木船の関係の団体その他を通じまして、実質的に保険の料率が下がるような機会をとらえまして、大いにPRをいたしまして、できるだけこの保険の加入を促進さしていきたい、かように考えております。
○久保委員 海運局長の御答弁は、僕の頭が悪いせいか、よく理解できないのであります。願わくは、こちらはしろうとでございますから、懇切丁寧に知っていることだけは全部御説明をいただきたいと思います。
 保険のこともよく知らないし、ましてや船のこともよく知らぬのでありますが、私が申し上げているのは、保険の加入率が低いということは、保険の性格そのものにも欠陥がありはしないか、あるいはその他の問題としては経営の能力の問題もあります。そういう点を改善しなければ、せっかくの保険が生きてこないのじゃないか、こういう御質問を申し上げているのです。今のお話だと、どうも少しは当たっているが、大体当たっていないお答えのようであります。これはもう少し保険の形態を変える必要はありませんか。大体これはどういうようになっているのですか。日本で相互保険の団体は二つでしょう。東京と九州地区ですか、そういうところにあるでしょう。もっともこれは出張所というか、出店というのはたくさんあると思うのですが、大体保険の機能はどうなんですか。
○辻政府委員 これは御指摘の通り、本拠は全日本木船保険組合が東京にございまして、日本木船保険組合が若松に本拠を置いております。おのおの支部あるいは出張所というものを各地に置いておるわけでございまして、全日本木船保険の方は約三十カ所にブランチを持っております。日本木船保険組合の方もやはり三十カ所近くブランチを置いておるわけであります。従いまして、私どもとしては、この木船保険の制度自体に欠陥があるというふうには考えてないわけでございます。
○久保委員 欠陥がなければ加入率は上がるんですよ。そうでしょう。もしもあなたのおっしゃる通り欠陥がないというならば、保険の必要がないということになるのじゃないですか。変な言い回しかもしれませんが、そういうことになりませんか。だからブランチを置いておること自体で、なるほどPRはそれで足りるかもしれません。しかし実際の支払い方法その他が非常に円滑にいっておるかどうかということは、私は知りませんけれども、それが損害があれば直ちにいくかどうかということ、むしろこれを二段階なら二段階に持っていくことがどうなのかということです。私の試みですよ。二段階というのは、たとえば若松なら若松、門司なら門司あるいは横浜なら横浜地区、これは海運局別でもけっこうですが、そういうところに相互保険の組合をつくらせて、そうしてそこで負担させるものは通常の災害――異常の災害になった場合には背負い切れませんから、その上の段階にして、そうしてあとは再保険で全部やる、こういう方式はどうなのか。保険組織としても、保険の機能としても、必ずしもりっぱで欠陥がないとは言えないのじゃないか。私は保険のことはよく知りませんが、そういうふうにでもすれば、多少前向きになりはしないかと思います。今までそういうことは全然御研究にないですか。
○辻政府委員 今御指摘がございましたのは、異常災害は国が負担しろというふうな御趣旨に解するのであります。現在の保険の立て方は、いわゆる異常あるいは通常のものを含めまして、この木船保険組合が元請になってやっていこう、そのうち七割につきまして国が再保していこうという建前をとっておるのでありまして、今御指摘のような制度につきましては、私どもとしてなお今後検討いたしたいと考えております。現在まではそういうふうには考えてないわけでございます。と申しますのは、この木船相互保険組合を設立いたしました趣旨は、これは現在でも民間の保険会社が木船保険というものをやっておるのでございますけれども、先ほど申し上げましたように、木船業者自体に保険に対する認識が不足な点がございまして、非常に危険な航海をする者だけが民間保険に入っておる。従っていわゆる保険料で言いますと、逆選択というような状況になりまして、料率を高くせざるを得ない。料率が高いがゆえにますます保険に入る者がなくなるということで、相互的によく同じような地域を走っておるとか、よく根拠を同じにしているような、そういうものが集まって相互的に扶助の精神で相互保険というものを進めることが適切ではないかということで、こういう保険を始めた次第でございます。従いまして、特に保険料を安くするような考えではなしに、国としては再保ということによりまして七割について国の信用を与えてやろう、それから再保険の事務費につきましては国からの負担でやっていこうという建前で立てたものでございまして、今のような制度になっておるわけでございます。
○久保委員 どうもあなたも保険のことをよく知らぬし、質問する私もよく知らぬのでございまして、知らぬ同士で議論しているような話なんでどうも……。海運局長、あなたは専門家なんですから、われわれは八百屋といっては語弊がありますが、いろいろやっておりますのでわからないから、質問するのもそういう意味で質問しているのですよ。私が言っているのは、二段階なら二段階にしろというのは、あなたがおっしゃるような趣旨とも少し違うのでありまして、これはむしろ末端にそれぞれの相互保険組合というかそういうものをつくらせて、まあ言うなれば、今農業災害の補償制度がありますが、そういうスタイルにある程度見習って分割していくことが一つの前進ではなかろうかということを言っているのです。中身について、再保険の仕方をどうするか、これはいろいろあると思う。その中から国家助成もある程度やるべきだと思うのであります。そこで今資料を出してもらってもどうかと思うのでありますが、事務費を補助しているとおっしゃるが、組合に補助しているのですか、事務費はどの程度補助しているのですか。
○辻政府委員 先ほど事務費を補助していると申しますのは、再保険特別会計の事務費は国が支弁しておるという意味でございます。これは年額約四百万円程度でございます。
○久保委員 いずれにしても、それぞれその保険の関係の担当者も各海運局に配置されておるわけであります。もちろんこれだけやっているのではなかろうと思うのでありますが、どうもこれだけやっているのだとすれば、三千そうぐらいの保険を扱うのに対しては、少しどうかと思うのであります。これは木船関係全体を扱う人なんですか。この五十九名の内訳を課長からでもお答えいただきたいのですが……。
○辻政府委員 これは今御指摘がございましたように、木船保険だけをやっておる人間ではございませんで、木船関係の一般の海運行政に従事しておる人数でございます。
○久保委員 いずれにしても、保険制度について、あなたは上だからよくわからない、課長がおられますから課長に一ぺんお尋ねしましょう。私がさっきからくどく申し上げているのは、船主の負担能力と危険の度合いというもの、この二つから保険の加入率は低いと一般にいわれておるのだが、それはもちろん大きな原因であると思うのだが、そのほかにこの保険制度に、このままでは前進できない面が相当あるとわれわれは見ておるわけです。これについて何らか今まで考えておられたかどうか、いかがですか。
○隅説明員 ただいま局長が答弁いたしました木船相互保険組合につきましては、極力各船主に対しまして相互保険組合に加入して組合員となるように指導いたしております。平水機帆船がこの数ではほとんど大半を占めておりますので、そういう船主に対する指導とかまだPRが足らないかと存じております。
○久保委員 PRが足らないとするならば、PRの方をもう少し積極的にやることも一つですが、私が言うのは、先ほど来何べんも申し上げたように、どうもこの保険自体、この仕組みにも欠陥があるとわれわれは思うのです。いただいた資料だけでは何もわかりません。数字だけですからわかりませんが、少なくともそういう保険制度そのものに対する考えを一つ検討してみたらどうか、こういうことでございます。できるならば社会保険的なものに切りかえることも実際いって大幅な前進ではなかろうかと思うのです。そういう面での助成もこれは大幅にしなければならぬ、そういうことについて一つも御意見がないというのは、残念ながらどうもこの制度が地に埋没した形ではなかろうか、こう思うのであります。これが三割とか五割とか加入率があるならまあまあですよ。ところがどこの保険でも、かけねばならぬ者の一割に足りないという保険では、保険の意義さえ失われやしないか、こう思うのです。そういう点について一つ御検討をいただきたい、こう思うわけです。今私が申し上げたように、制度そのものを変えるという研究くらいはしておりますか、いかがですか。
○辻政府委員 今社会保険的な考えのお話がございましたが、これをつくります際には、そういう考えも検討いたしまして、政府部内でいろいろと折衝したのでございますが、こういう木船関係のものを社会保険に考えるというわけにはいかぬということで、政府としましては、現在のような相互保険という形で発足した次第でございます。社会情勢その他の変動によりまして、また社会保険的なことを考えなければならぬということもあり得ますので、私の方としては今後も検討を続けていきたい、かように考えております。
○久保委員 ところで、その保険事業で、今の保険の体制の中で合理化できるものがあるかどうか、合理化によって料率を引き下げるということも考えるべきだと思うのが、これはどうですか、いかなる点がありますか。料率を引き下げる工夫――料率が高いということも加入率を低下させる一因でありますから、それは前向きの問題じゃなくて、うしろ向きになりますが、いかがですか。
○辻政府委員 保険組合としまして、合理化をするという点には大体二つあると思うのでございます。一つは、非常に常識的なことでございますが、できるだけ経費の節減をはかるということと、それから対象をできるだけ多くして加入指数をふやしまして、それによって一面経費の節減にもなりますし、危険の分散によりまして保険料率を下げていくという、その二つの道があると考えております。
○久保委員 道はあると思うのですが、そういう検討はされておりますか。
○辻政府委員 加入指数の増加及び組合の経費の節減の方法につきましては、絶えず監督し、また加入につきましては促進するように慫慂いたしておりまして、努力いたしております。
○久保委員 二つの保険組合ですが、これはいずれも経理状況は良好でございますね。それで、これはこういう相互保険の関係から見て、かなり良好だとすれば、次は組合に対するサービスということで、料率の引き下げ、こういうことが一番先に考えられねばならぬと思うのですが、この点はいかがですか。
○辻政府委員 こういう保険におきまして、もちろんそれによりまして積立金がふえてきますならば、料率を下げることが望ましいのでございますが、一面から申しますと、日本は非常に災害の多い国でございまして、台風時期等においては、相当災害の出ることも予想せられるわけでございます。その際に、保険組合が破産的な状態になっては元も子もなくなるわけでございます。予想されるような災害に耐え得る限度において料率を下げることが望ましいわけでございます。それで、過去におきましても料率を下げてきたこともあるのでございますが、今回は、将来の災害等も考えまして、利益還付という形で組合員に利益の一部を返還いたしまして、実質的に料率の引き下げの効果を上げたい、かように考えておる次第でございます。
○久保委員 いずれにしても、資料があとになってちょっと工合が悪いのでありますが、最近の二つの相互保険組合の決算報告を出してみて下さい。どうもあなたの方の話ばかり聞いておったのでは、今のが一番いいんだ、いいんだと言う。そういうことではちっとも保険の意味をなさぬし、そういう制度自体に疑問を持つのであります。これは資料を出していただきたい。
 それからあなたに申し上げておきますが、くどいようですけれども、こういう制度自体を生かしていくというのがあなたの役目だと思いますので、もっと生かす工夫を新たな観点から考えられるべきだと思います。
 そこで、この法案の改正の中では、今御説明のあったように、黒字になったから利益の一部を組合員に還元しようというのだ、こういうことであります。これは再保険の部面でありますが、組合自体に還元するのですか。
○辻政府委員 これは、まず再保険の特別会計から再保険組合に返しまして、両保険組合から各組合員に還付するようにやるわけでございます。
○久保委員 いや、それは手続を聞いておるのじゃないのです。この法律改正は、再保険の中で黒字になったから一部を組合員に返す、こういうことですね。だからその組合を通して組合員に返すわけでしょうが、二つある組合は、現在黒字のように見えるから、やはり再保険の付保と同様にそれぞれの組合から組合員に還付するのか、これをお尋ねしておるのです。
○辻政府委員 今のお話の通り、組合から組合員に返すわけでございます。
○久保委員 そこで、「政令で定めるところにより、」云々と、こう改正されているが、政令はどういうふうにきめていくのですか。
○辻政府委員 この政令は、当該年度の再保険料の百分の八十に相当する額を超過したときに、その超過したものを返すことを原則にいたしております。ただしその際に、従来積立金が百分の八十に達していない場合でありますとか、あるいは欠損があるという場合には、その欠損を埋めて、今申し上げた百分の八十をこえなければならぬというふうに規定するつもりでございます。
○久保委員 そうしますと、一つは、今の計算で、さしあたりこの法律が通れば新しい年度でお返しになると思うんだが、これはどの程度の額をお返しになるか。もう一つは、政令できめるところによって組合に返すのは「全部又は一部」という表現になっておるが、それはどういうことか。
○辻政府委員 大体三十九年度に還付いたします金額は約二千万円程度と予想いたしております。
 それから法律の表現上「全部又は一部」というのは、毎会計年度の積立金がその当該年度の再保険料の百分の八十に達しております際には、超過いたしましたものが全部になるわけでございますが、積立金が百分の八十を切っておる場合には、百分の八十までは積み立てに留保いたしまして、その留保した残りを還付いたしますので、その際には一部となるわけであります。そういう趣旨でございます。
○久保委員 ちょっとわからぬですね。百分の八十を超過した場合には全部だ、それから八十までも全部であ下る。あなたの説明では一部の場合はないですよ。
○辻政府委員 私の説明がまずかったと思いますが、従来積立金があるわけでございます。その積立金が当該年度の保険料収入の百分の八十に達していない、百分の七十しかないという場合には、百分の十だけ積立金の方に繰り入れまして、それの残余を還付するということでございますので、一部になるわけでございます。
○久保委員 それから、三十九年度に二千万返すわけですか。
○辻政府委員 これは会計年度を翌々年度といたしておりますので、三十七年度の分につきましては三十九年度に相なるわけでございます。
○久保委員 その場合、相互保険組合には幾らくらい返す予定ですか、全部合わせて二千万ですか。
○辻政府委員 二千万円と申しますのは、再保険特別会計から両組合に還付する金額でございます。
○久保委員 そこで、さっき申し上げたように、その場合はそれぞれの組合が黒字だ。黒字だからこれに見合って返すんだというお話ですね。それで予想として大まかに、その両組合は二千万のほかに何か返すものがあるのですか。
○辻政府委員 ちょっと今数字を当たっておりますが、両保険組合は合わせて二千万円を再保険特別会計から還付を受けまして、これに組合自体として返戻する金額を合わせて組合員に返していくということでございます。今数字を当たっております。
○久保委員 いずれにしても海運局長、この制度ならず全部について定期的に当委員会にその運営状況を報告した方がよさそうだな。法案の改正のときだけ質問に答えるんじゃなくて、政府の責任として、そういう不信のものは――不信と言っては語弊があるが、まあもうかってきたからいいけれども、勘定そのものは不信だ、そういうものは定期的に年二回くらいは本委員会に報告した方がいい。法案の改正でもなければこちらも質問しないが、あなたの方も答弁するものじゃないと思っているから、何を聞いてもおわかりにならぬし、さっぱり新しい知恵も浮かんでおらぬようです。いかがですか。
○辻政府委員 そういう御要望があれば、いつでも報告申し上げます。
○久保委員 御要望がなくとも、政府の責任において報告するのが当然である。要望がなければ報告しないというのは不届き千万だ、そうでしょう。
○辻政府委員 毎年報告いたすことにいたします。
第72回国会 衆議院運輸委員会議事録 第13号 (昭和49年3月8日)
○三池委員長 これより会議を開きます。
 船主相互保険組合法の一部を改正する等の法律案を議題とし、質疑に入ります。
 質疑の通告がありますので、これを許します。宮崎茂一君。
○宮崎委員 ただいまの船主相互保険組合法の一部を改正する等の法律案に対しまして、若干質疑を行ないたいと思います。
 この法案は、政府の提案の理由にもございますが、第一に、損害保険の対象といたしまして小型鋼船を新たに加えるということが一つの主眼点になっているようでございます。それからまた、第二番目に、政府によりますところの再保険の制度を今回廃止しようということでございます。また、第三点といたしましては、相互保険組合の合併の規定を設けておるわけでございまして、現在の組合を合併しようということかとも思います。したがいまして、私はこの三点に一番、法改正の主眼があるのではないかと思いますから、この三点につきましてお尋ねをいたしたいと思うわけでございます。
 第一点について伺いますが、新たに小型鋼船を保険対象に入れるわけでございますが、現在の木船保険の現状について少し明らかにいたしたいと思うわけでございます。
 いま木船相互保険組合は二つあると聞いておりますが、両方合計してお答え願いたいと思いますが、この組合に加入をいたしております船腹は何隻で、どの程度なのか。それからまた、保険加入の船舶がその対象の船舶に占める割合はどの程度なのか。一応この二点をひとつお尋ねいたしま
○薗村政府委員 先生お尋ねの木船保険の加入状況につきましては、木船保険の加入対象の船腹数が、隻数で申しまして一万五千三百二十九隻、それからトン数で申しまして八十九万六千三百四十二総トンございます。それに対しまして四十七年度末の加入隻数で申し上げますと、この木船保険の両組合に加入している船腹の数は、隻数で申しまして二千百四十三隻、したがって、対象船舶の隻数に対する比率は一三・九五%、それから加入しております船腹の総トン数は二十四万五千百九十三トン、したがいまして加入対象船腹の総トン数に対します割合は二七・三五%となっております。
○宮崎委員 ただいま木船の対象船舶は約一万五千隻ぐらい、そのうち二千百隻ぐらい加入しているということでございますが、そのほかの木船は現在どうなっているのですか。全然加入していないのか、あるいは民間のほうに一部加入しているという話もありますが、そこらはどうなっているのか、隻数と船腹についてお知らせ願いたい。
○薗村政府委員 私、申しおくれて失礼でございましたが、実は木船保険は、この両組合がやっておりますのとは別に、民間の損保会社でも経営をしておりまして、その加入隻数が一千七隻ございます。したがいまして、加入隻数は両組合の二千百四十三隻と合わせますと三千百五十隻になります。したがいまして、加入対象隻数、先ほど申し上げました一万五千三百二十九隻に対しまして、加入率は組合と民営の損保会社の加入の分とを足しますと二〇・四%ということに相なります。
○宮崎委員 非常に加入率が低いと思われるのですが、どうしてこんなに低いのかということ、それからもう一つ、民間の損保に入っているものと、この木船相互保険組合に入っているものとどういうふうに違うのか、簡単でよろしゅうございますから、どっちが有利なのか、その辺をひとつ。
○薗村政府委員 先生御指摘のように、木船保険につきましてはどうも加入率が低いというきらいがございます。その内容をちょっと聞いていただきたいと思うのですが、私どもも、内航に従事しております木船の数が、木船の貨物船と油送船についてトン数の階層別に保険の加入の状況を調べてみました。それによりますと、貨物船につきましては、二十トン未満の一番小さい船の組合に対する加入率が実は〇・九%でございます。それから二十トンから五十トン未満、これが八・五%、五十トンから百トン未満、これが三八・三%、それから百トンから二百トン未満が六一・六%、二百トン以上が七六%という加入率でございます。
 それから油送船で申しますと、二十トン未満の加入率が一三・八%、それから二十トンから五十トン未満が二五・八%、五十トンから百トン未満が一五・〇%、それから百トンから二百トン未満が三五・二%ということになっておりまして、これをお聞き願ってもわかりますように、小さい船の保険の加入率が非常に低うございます。たとえば貨物船で申しますと、五十トン未満の船舶の保険加入率がきわめて低いということでございます。これを貨物船と油送船とトータルしてみましたら、五十トン以下の船が組合の保険に入っている率は五〇%でございます。民間保険の加入率を入れまして七〇%でございます。したがって、五十総トン以上の木船の保険加入率はかなり高い、逆に五十トン以下の小さい船の加入率が非常に低い、こういうのが加入率の総体が高くならない原因でございます。どうもやはり小さい船と申しますのは、輸送の実態からいたしましてあまり遠くに出ていくというような実情ではございません。まあ比較的近距離のところで一日の仕事を終えて帰ってくるというような小さい木船の運送に従事している姿だろうと思いますので、その辺、保険の必要性ということについても、やはり必要性を感じる度合いが少ない。したがって、加入している度合いが少ない、こういうことではないかと私ども思うのでございます。
 なお、民間保険との関係につきましては、この保険が、組合で相互扶助という立場から自主的な組合員の間における保険制度として、民間の保険会社が木船について保険制度をあまり好まなかった時代から実は発足してまいったので、ほんとうに組合員相互のためにということで行なってきた保険事業であると思っております。保険料率などを簡単に比較することは、いろいろ中身がございまして違いますが、一般に申しまして、みずからの相互扶助のために若干低い料率でやっているというのが相互保険組合の保険事業の実態だと思います。
○宮崎委員 民間の損保に比べて相互保険のほうが少しは有利だというふうに解釈してよろしゅうございますか。それじゃ、その規模を知りたいために、大体この保険組合で毎年どのくらいの収入保険料があって、どのくらい保険金額を支払っているのか、あるいはまた、その事故件数がどの程度あるのか、その点を簡単にひとつお願いします。
○薗村政府委員 両組合の四十七年度の年間の収入保険料は、両組合合計で二億八千三百九十一万九千九百七十二円でございます。
 収入の内訳は……
○宮崎委員 いや、内訳はいいです。
○薗村政府委員 支払い保険金は、両組合合計で一億七千二百五十四万一千五百七十一円でございます。
 それから、お尋ねの支払いの件数、保険事故の件数は、四十七年度中で百七十七件でございます。
○宮崎委員 この木船相互保険の大体の全貌がいまの質疑の中で大体明らかになったんだろうと思いますが、しからばこの輸送需要の中に占める木船のシェアと申しますか、そういったものはどの程度あるのか、内航輸送の中で木船がだんだん減っていくということをいわれております。この内航輸送の中に占めますところの内航の木船の輸送量、これはトン数でもトンキロでもよろしゅうございますが、どのくらいあるのか。
 第二点は、その木船の中のこの相互保険に入っている木船、これは推定でないと出ないのかもしれませんが、何%ぐらい内航輸送を担当しているのか、この辺をひとつお尋ねしたいと思います。
○薗村政府委員 内航輸送に従事しております木船につきまして、まず全体の内航の船腹量は、隻数で申しまして一万五千七百九十四隻、総トンで申しまして三百六十四万四千トンでございます。それに対しまして木船の船腹量はどうであるかと申しますと、隻数が七千九百四十一隻、したがって内航総船腹量に対します木船の隻数の割合は五〇・三%でございます。それから総トン数で申しますと、木船の船腹量の内航に従事しております総船腹量の合計は四十四万六千トンでございます。したがって、内航の総船腹量に対します割合は一二・二%でございます。
 それから、その船がどういう輸送活動をしておりますかという輸送量について申し上げます。内航の輸送量は、四十七年度で申しまして輸送量のトン数は三億二千百四十七万六千トンでございます。それからトンキロで申しまして一千二百億トンキロでございます。
 それに対しまして木船の輸送量は、トン数で二千二百六十六万八千トン、したがって、全トン数に対します内航の船腹の輸送の割合は七・一%。それからトンキロで申しますと、木船の輸送量は三十二億トンキロでございます。したがって、全体のトンキロに対します木船のトンキロの割合というものは二・五%でございます。したがって、船舶の隻数の割合は半分でございます。しかし遺憾ながら、トンキロで申しますと、その輸送量として運んでいるものは二・五%にしかすぎないという実情でございます。
○宮崎委員 いまのトンキロの二・五%という数字は、木船全体の輸送のトンキロのシェアなんで、実際この保険に入っている船はもっとシェアが小さくなるわけですね。全体の木船の中の二七%ぐらいがこの保険に入っているわけですから、保険に加入している木船が全体の内航輸送量に占める割合というのは、二・五%かける二七%ですか、いわば一%以下ぐらいになる、〇・七%ぐらい、そういうことになるのですか。その辺はどうでしょうか。
○薗村政府委員 おっしゃるとおりでございまして、先ほど申しました組合に加入している比率でその二・五%の内訳をお考えいただければ、先生おっしゃるとおりの数字になるかと思います。
○宮崎委員 そこでお伺いしたいのですが、内航輸送に占める割合も、加入している木船の輸送に占める割合というのは非常に小さい。そしてまた、これから木船もだんだん少なくなる。一方、保険のほうは非常に黒字で健全だということでございますが、政府はこの際、鋼船まで入れて保険を強化していこう、こういう御方針でございます。これは逆に考えてみまして、だんだんと少なくなる、そしてまた、海上輸送に及ぼすシェアも非常に小さい。だからこの際、ひとつ加入者も小さいんだから、こういった木船の相互保険はもうやめたらどうだろうか。あるいは民間の保険もあるわけですから、そちらのほうで救えるんじゃなかろうか。多少民間のほうが歩が悪いということもございますけれども、そういうこともひょっと考えられるのですが、この点はどういうふうにお考えでしょうか。やはりいままでの木船相互保険を続けていこうというような根拠と申しますか、どうしてもこれは続けていかぬといけないんだという判断にお立ちになっての法律改正だと思いますが、その点はどういうふうにお考えですか。
○薗村政府委員 やはりこの保険は、従来から船主が相互扶助の精神で組合をつくりまして、保険事業を、民間の事業が手を出さない前から自分らでやっていこうということで生み出されて育ってきた組合でございます。おっしゃるとおり木船の隻数もだんだん減ってまいります。したがって、保険の加入隻数も減ってくるということで、木船だけでは先細りになると思います。しかし、減っていくとはいいながら、残っている木船について、そういった相互扶助の精神で始めた保険事業が今後も残っていくということは当然必要でございますし、片や民間の損保もございますけれども、やはりそれに切りかわるというよりも、従来の自分らの組合の中で保険事業を続けさせていくということが必要ではないかと私考えておるのでございます。したがって、先細りになる木船だけでは保険の規模として適正でなくなってまいります。保険の支払い能力に欠けるような点も出てまいりますので、この際小型の鋼船三百総トン以下のものも入れまして、これは現在は民間損保でやってもらっているわけですけれども、これを小型鋼船三百トン以下のものを取り入れるということにして、この組合の保険事業を続けさせていきたいというような考えでございます。
○宮崎委員 政府はそういうお考えですが、その辺が一つの論点になろうかと思います。
 それでは話を次に進めまして、今回新たに三百トン未満の鋼船を保険の対象に入れるということでございますが、私がお尋ねしたいのは、小型の木船が鋼船に切りかわるから、その分は鋼船でもこの保険に入れたいということだろうと思いますが、三百トン未満の鋼船を入れた理由と申しますか、私、率直に考えますのは、どうして五百トン未満というようなことにはならないのか、その辺のことと、線をどうして三百トンということにされたのか、ひとつその点についてお伺いいたします。
○薗村政府委員 木船から鋼船に変わっていきます大体の状況を私どもで調べてみました。四十三年から四十四年、四十五年、四十六年と、実は四年間とってみたのでございますが、その間、自己資金船、それから船舶整備公団の共有船を含めまして、貨物船と油送船で九百五十九隻つくられております。それに対しまして、木船の引き当てになった隻数は二千七百隻ございますが、そこで建造された九百五十九隻の建造の総トン数は、二十四万五千トンでございまして、したがって一隻当たりの平均トン数が二百五十六総トンということに相なります。したがいまして、木造を引き当てにいたしまして代替された自己資金船、公団船共有船を含めまして、建造された鋼船の大体の姿というものが、一隻当たり二百トンから大体三百トンまでの間ということになると思います。
 それからもう一つ、私どもで同じく四十三年度から四十六年度までの数字をとりまして、自己資金船で貨物船だけの数字を見てみたわけでございますが、そういたしますと、先ほど申しました隻数の中で、貨物船の建造の隻数は七百九十五隻でございます。その建造トン数が十六万七千総トンでございまして、貨物船だけをとってみましたら、平均のトン数は二百十一総トンということになりまして、この数字でも大体二百トンから三百トンまでということがうかがわれると思うのでございます。この建造されました七百九十五隻のうちで、三百トン未満の船をとってまいりますと、六百八十五隻ということで、全体の隻数のうちで三百トン未満の隻数が八六%になっているということでございます。
 こういう数字から、私ども木船を引き当てとして建造されました鋼船の建造実績からいたしまして、いまも申し上げましたように、建造された鋼船の約八五%程度が三百トン以下に納まっているという実績、それから木船と海上輸送分野において大体共通しているところの鋼船の大きさというものは、三百トン未満のものでいいのではないかということで、保険の対象に加えることを三百トン未満ということにいたした次第でございます。
○宮崎委員 これから入れようとされている三百トン未満の小型鋼船でございますが、それは現在は民間の保険に入っているのか、何も保険には入っていないのか、そういった何%くらい、どのくらいを対象船舶にされて、そのうちどれくらいの隻数が新しい小型保険ですか、いままであるこの保険に入ってくるという御期待なのか。それから、はたしてそういう三百トン未満の鋼船が入ってくるだろうか、その辺の見通しについてひとつお尋ねいたします。
○薗村政府委員 三百トン以下の鋼船を考えましたときに、大体隻数といたしましては一万五千隻程度船舶があろうと思います。この三百トン未満の小型鋼船は、現在のところ八五%程度民保に入っております。したがいまして、残った一五%の分、それから新たに建造されていく小型鋼船の分、それがこの組合の対象として今後考えていける保険対象船舶であろうと思います。
○宮崎委員 その民間の保険に入っている小型船は、もう全然この相互保険には入れないということでございますか。
○薗村政府委員 特にそういう制限を加えることはもちろん考えておりませんので、この組合の保険事業に入っていただいてけっこうだと思っております。
○宮崎委員 民間の会社からいうと、政府のこういった相互保険というのができますと、先ほどお話しになりましたが、そのほうが有利だとすればこちらのほうになだれ込む、そうすれば民間事業を圧迫するということにはならないのですか。その辺はいかがですか。
○薗村政府委員 私、先ほど若干組合のほうが有利であるということを申しましたのは、いままでの木船の事業をやっております実績に徴しまして申し上げたのであります。今度は鋼船の新たな分野が加わります。これにつきましては、やはり民間と共存共栄でやっていくということであろうと思います。もちろん相互扶助という目的でやっております組合の保険事業でございますから、利益を生むという必要はございません。利益が出たら組合員に渡すとか、あるいは保険料を適当なことに考えるとかというようなことでやっていけばいいのだと思いますけれども、やはり民間の事業とお互いに適当な競合関係にありながら、またお互いに不当に料率が低くなるというようなことがないように、両方とも健全に発達していくということが私は必要だと思っております。
○宮崎委員 もう一点、小型鋼船についてお伺いいたしますが、海難の問題ですね。先ほど木船のほうは一カ年で百七十七件の事故があった、支払い金額のほうでそういうお話があったわけです。小型鋼船のほうは非常に海難が多いといわれておるわけで、この手元の資料によりますと、これはいつの統計かわかりませんが、百トンから五百トンが一番多い。四百二十四件。この中で三百トン以下がどのくらいあるか、これは私は資料を持っておりませんですが、相当あるだろうと思います。小型鋼船が入ってまいりますと、それだけ海難事故が多いので、保険財政はだいじょうぶなのかどうかという懸念がございます。これはまたその次の再保険の問題ともからんでまいりますけれども、その点についてはだいじょうぶかどうか、お伺いいたします。
○薗村政府委員 従来の木船組合につきまして、再保険のところでもまたお話を伺えると思いますけれども、かなりの異常危険準備金をすでに両組合として持っておりますし、それから国の特別会計を廃止いたしますときに、国の特別会計が積み立てております積み立て金もその際両組合に交付することにいたしております。したがいまして、この保険事業としての基礎はかなり強固なものがございます。ただ、先生御指摘のように、小型鋼船が入ってまいりますと、何しろ新しい仕事でございますし、一隻当たりの損害もいままでの木船に比べて大きい金額になると思いますので、一定の割合につきましては、両組合からやはり適当な民間の再保険機関に再保険に出すということが必要だと考えております。また、その用意も再保険機関にございますし、また引き受けてくれる現実の話し合いも進んでおるということでございます。
○宮崎委員 それでは、再保険の話に入りましたので、私といたしましても第二点の再保険を廃止するという問題に入りたいと思います。
 これまで、昭和二十八年からですか、二十年あまり政府による再保険の制度があったわけでございますが、これを今回廃止しようということでございます。そのおもな理由と申しますか、これは廃止するということは保険自体基礎が非常に弱くなるんじゃないか。そしてまた、いまの鋼船も含めまして、異常災害――ルース台風みたいな災害ですね、そういったときに対処できるのかどうか。そしてまた、この再保険というのはいままで相当貢献してきたと思うわけですね。それをこの際どうしても廃止しなければならぬというふうに決意されたその辺のいきさつをお尋ねしたいと思います。
○薗村政府委員 国の再保険制度と申しますのは、この組合の保険制度ができました二十六年におくれて二年後の二十八年から始まっております。そのときの考え方といたしましては、この組合が発足まだ日も浅くて、保険能力が弱い。一たび大きな災害が起こりますと、多額の保険金支出を要する事態が発生して、組合員の保護に欠ける、保険金の支払いができなくなる、こういうことでは困るというのが発足当時の趣旨でございました。ところが、その後の木船の事故率というのは、当初予定しておったよりも比較的低うございます。したがいまして、組合の純保険収支は、両組合合計で見ていただきますとずっと黒字でございます。その結果、発足当初約一千百万円程度しかございませんでした異常危険準備金が、どんどんその後累増いたしまして、四十七年度末には約二億七千万円に達する予定でございます。したがって、あとでも申し述べますけれども、今後万一異常事態が発生しても、現在保有している準備金によって対処し得ると私どもは判断しております。したがって、国の再保険制度というのは、発足当初に所期しておったその目的を達して使命を終わったということで、現在その制度を廃止しても支障はないと私どもは考えております。
 それから、一方、国の木船再保険特別会計も、昭和三十年度以降ずっと黒字で推移してまいりました。そこで、四十七年度末には、組合の異常危険準備金と同様な趣旨で積み立てております積み立て金が約一億四千万円ございます。そこで、特別会計を廃止します際に、この積み立て金を組合に交付して積み増しさせるということで、したがって、組合の積み立て金は両方を合わせますと四億一千万円になりますが、そういった積み増しをさせることによって、保険能力の一そうの強化をはかるということを私どもは考えておるのでございます。
 それから、この程度の異常危険準備金、積み立て金で異常な災害にどの程度たえ得るものであろうかという点でございます。この点につきまして、私どもは過去の戦後の例で一番災害が大きかったルース台風程度の災害が発生するということを考えて仮定をしてみました。そういたしますと、今後木船保険が続いていきますし、さらに小型鋼船の三百総トン未満の保険事業も始まります。そういう制度が始まった五十年度ごろの姿を想定いたしまして、かりにそのときにルース台風程度の災害が発生したときに、どの程度の異常災害に対する負担をこの組合としてしなければならないかという金額をはじいてみますと、木船と鋼船の損失に対する保険金額ということを考えまして、一億三千六百万円程度の異常災害に備える準備金があれば足りるという計算ができます。したがって、五十年度におきましては、先ほども申しましたように、組合自体の異常危険準備金と、それから新たに特別会計から入ってきます積み立て金とを合わせまして、おそらくこの組合の積み立て金は四億四千万円程度に五十年度ごろにはなっていると考えられますので、四億四千万円程度の積み立て金があれば、ルース台風クラスの異常準備として、一回当たり一億三千六百万円で済むといたしますと、三・二倍、三・二回分程度のルース台風級の異常災害にたえられるという計算を私どもはいたしております。
 なお、木船については、再保険制度はそういうことで発足当初の所期の目的を達したということでございますけれども、鋼船につきましては、先ほど申し上げましたように、やはり発足当初の組合としてみずからだけで全部の保険の支払い能力を持つということが無理でございますので、民間の再保険機関に一定割合の再保険に出すということを考えておるし、またその用意はできているということでございます。
○宮崎委員 この組合の基礎が非常に強固になったので、そしてまた木船もだんだん減ってくるわけだし、この国による再保険の制度はもうやめたいということでございます。また、鋼船のほうは、これはいまのお話しのように、別途に民間で再保険をするということでございますね。そういたしますと、この制度としましても廃止しようということになるのですが、このまま残しておいてもどうかというような気もするわけです。もうしばらく、一年でも二年でも残しておいたらどうかなというような、またじゃまにもならぬのじゃないかなという感じもいたしますが、これはやはり政府の決断になるのか、私もその辺よくわかりませんけれども、そういう考え方はないのでございますか。そういう考え方に対しては、いまの理由でもうこれはやめるんだということになるんでしょうか。
○薗村政府委員 先生お話しのように、このまま再保険制度はあってもじゃまにはならないんじゃないか、おっしゃるとおりだと思います。ただ、木船の再保険制度がございましても、木船だけの保険制度では、木船の隻数がどんどん減っていきますので、先細りにならざるを得ないということでございますので、私どもはむしろやはり小型鋼船を入れるという新しい保険分野に事業を拡張するということを主眼に考えて、所期の目的を終わった再保険制度は、もうこの際終わりにしてもよかろうということを考えたわけでございます。
 なお、その際、国の特別会計に積み立てられておるところの一億四千万円程度の金も組合に交付して、組合の基礎を固める一助にするということで、この際一連の措置を考えたほうがいいということを私どもは考えたのでございます。
○宮崎委員 それでは、木船再保険特別会計法も一緒に廃止になるわけでございますが、この特別会計の規模と申しますか、年間どういう規模でどのぐらいの人間が働いているのか、また従事しておるのか、その辺のことを御説明を願います。
○薗村政府委員 四十七年度で申し上げまして、木船再保険特別会計の規模といたしまして、収益は二億一千二百八十七万四千円、費用は一億七千五百九十七万三千円という規模でございます。この特別会計に所属している職員といたしましては、私どもの海運局の中に六名現在従事しております。
○宮崎委員 木船再保険法の廃止は、ここに書いてありますように、ことしの三月三十一日となっておりますが、特別会計のほうは一年あとになるわけですね。こまかい質問ですけれども、これは何か事務が残るわけでございますか。
○薗村政府委員 今回御審議をお願いしております船主相互保険組合法の改正と並んで、木船再保険法の廃止と木船再保険特別会計法の廃止という問題がございます。木船再保険法は、今年昭和四十九年の四月一日で廃止をいたしたいのでございます。したがって、国と組合の再保険関係は四月一日以降新たな関係を結ばないということになるのが木船再保険法の廃止時期の問題でございます。
 それから、木船再保険特別会計法のほうは、一年おくれました昭和五十年の四月一日に廃止をしたいと考えております。と申しますのは、保険の期間は一年間になっておりますので、たとえばことしの三月の末日ぐらいに契約を結ばれました保険につきましては、一年間有効で、五十年の三月の末まで有効でございますので、どうしてもそれに対する再保険金の支払いというものは一年間残りますので、昭和五十年の四月一日から廃止ということに一年おくれといたしておるのでございます。
○宮崎委員 この特別会計を廃止することに伴いまして、冗員と申しますか、六名ですかその定員の問題があるわけでございますが、これはどういうふうに処置なされるおつもりですか。
○薗村政府委員 先ほども申し上げましたとおり、現在六名の定員が私どもの海運局に認められております。これで昭和四十九年度限りで特別会計が廃止になったときには、この定員を一般会計に振りかえていきたいということを考えております。
 いずれ昭和五十年度の予算のときに問題となると思いますけれども、私どもはそのまま一般会計にこれを振りかえていくということを努力もいたしますし、そういうふうになるということを考えております。
○宮崎委員 それでは次に進ましていただきまして、第三番目の点でございますが、この法律の改正によりまして、現在若松と東京でございますかに二つの木船相互保険組合がございますが、これを合併するということになるのだろうと思います。合併する法律を新たに挿入するわけでございますので、この合併についてお伺いをいたしたいと思います。
 当初からこの組合は別々に育ってきたわけでございます。政府としては法律を改正して合併をするような体制、法体系を整えられておりますが、これを積極的に合併したほうがいいとお考えになって、この法律が通過した場合には合併しろということで積極的におやりになるのかどうか、そういった基本的な政府の態度についてお尋ねいたしたいと思います。
○薗村政府委員 私ども、この法律案の中でごらんになっていただきますように、両組合が合併をするという道を開くための規定を設けてございます。
 なお、この両組合は、いまもお話がございましたように、二十六年からずっと東京と若松でそれぞれ育ってまいりました。ただ役員の方もそれぞれ東京のほうは十三人、それから若松のほうは九人といらっしゃいますけれども、このうちでほんとうに常勤で給料をお取りになっているという方は、一番上の方一人ずつでございます。あとは木船の業者が相互扶助のために、自分らの保険事業だということで、役員に名はお連ねになっているけれども、給料などはお取りになっていないということでございます。しかも、先ほどのとおりに、実は隻数が減ってくると保険の規模はだんだん縮小してくるという、先細りになってまいりまして、このままでは、一つずつでは、保険の集団として規模が適当でないということになってまいりましたので、当然両方一緒になってやろうじゃないかという機運も両組合にございます。また、先ほど申し上げましたように、両組合が現在持っている二億七千万円の異常危険準備金にいたしましても、さらにまた、国の特別会計から交付いたします一億四千万円の積み立て金にいたしましても、二つで分けて使うよりも一体で使うということのほうが組合の保険能力の一そうの強化になるということでございます。そういったことで、両方の組合とも合併の必要性をみずから感じておるようでございますし、合併の機運も十分にあると思いますので、私どもはそれがうまくいくようにこの法律で合併の規定をつくると同時に、今後とも力をかしていけばいいのじゃないかということで考えております。また、事務所などの点につきましても、重複しているようなところは一カ所で済ますというような合理化の道もはかられると思いますので、この組合が合併することによって、内容も充実するし、事務の合理化もはかられるということで、私どもは期待しておるところでございます。
○宮崎委員 ただいまの話を伺ったのですが、合併に積極的というほどでもないけれども、つまり、法律をつくって、どうも両組合とも合併したいという気持ちもあるようだから合併させるようにしたいのだ、合併による利点という点になりますと、事務所の節約とかそういうことですか。そのほかに合併による利点はどういうことになっておるのか。それからまた、あとからの小型鋼船でございますね、これはどういうふうに組織の中に加入者のほうは入ってくるのか、その辺ひとつお伺いいたします。
○薗村政府委員 私、説明がちょっと悪かったと思います。
 両組合で合併しようという機運がもう十分ございます。私どもが別に法律をつくって強制をするわけではないということを申し上げましたので、必要性も両組合で痛感しておりますし、また組合の合併も、この法律が成立をいたしましたら、あまり日時がたたない間に合併の手続をするということは、私どもも期待しているところでございます。
 また、小型鋼船がふえましても、実は東京の組合のほうは職員の数が十一人、それから若松の組合のほうは十九人ということでやっておりますが、この人数をふやすことなく、小型の鋼船の保険事業もこの人員でやっていこうということを、両組合で考えているようでございます。
○宮崎委員 それでは、最後に大臣にお伺いしたいのですが、いまお聞きのように、いままでの木船でございますが、この輸送分野に占めるシェアは非常に少ないわけでございます。そしてまた保険規模も小さいということでございます。しかしながら、運輸行政の中でこの分野はあるいは中小企業かもしれません。全体の国内輸送とか、あるいはまた運輸行政という大きな立場からお考えになると、あるいは小さいかもしれないのですが、私はこの中小企業をほんとうにきめこまかく、あたたかい気持ちで見ていただきたい。合併とか、あるいはまた法律の廃止という問題がございます、その間に、いろいろな業界の中で摩擦なり不安なり、そういったことの起きないように大臣はひとつ指導していただきたいと思うわけでございます。
 また、省エネルギー時代と申しますから、私はまだある程度内航輸送というものは見直されるような時代も来るのじゃないかというふうに思うわけでございます。この木船業界、あるいはまた小型鋼船業界に対しまして、この法律改正を機に、ひとつ大臣の御感想と申しますか、お気持ちをお尋ねしたいと思うわけでございます。
○徳永国務大臣 この法案の提案理由の説明の中にも申し上げておりますように、いま御指摘がございました小型木船がだんだんと鋼船化していく傾向にあることは事実でございます。したがいまして、二つの組合の合併の道を開きまして、まず基盤の強化をはからなければならないということが主たる理由でございますが、この法案を成立させていただきました暁には、両組合の円満な合併を促進いたしまして、保険に加入していらっしゃる中小企業の方々のいわゆる組合員の皆さん方に対するサービスの向上と申しますか、そういう面に資することができるというふうに考えて、御提案申し上げ、お願い申し上げておる次第でございます。
○宮崎委員 これで質問を終わります。

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